Syunoven / ISSUE16

Date : 2010.06
Common Magazine issue16

HUMANREPORT × 朱乃べん / Syunoven

朱乃べん / Syunoven PROFILE

ISSUE16 DETAILS


□ さっき人との出会いで絵が変わったって言ってたじゃないですか? 自分の中で上達を感じたりというのもあると思いますけど、そういうのは描き続けることで感じるんですか? それともそういう人との出会いが大きいですか?

V …まぁ出会いだけでは上達しないっすからね。

□ 絵が変わるんですか? それとも自分の絵の見方が変わるんですか?

V どっちもあると思いますよ。26で初めて個展をやったんですけど、その個展に向けて制作を始めた頃によくに会っていた友達がいて、彼はイダキ(デジュリドゥ)を吹く人で同い年なんだけど、彼の生き様、イダキに対する考え方に凄く影響されて、自分の中で何かが変わっていくのを実感してた…。そういうタイミングだったんですよ。内なる意識に向き合い始めた頃だったから。だから絵にも表れましたね。

□ べんさんの絵って結構初見だと分かりにくいじゃないですか? 例えば、モチーフがスカルだったり、人間だったり…最初からああいう絵じゃなかったと思うんですよ。 うちらの世代なんかは特にサンプリングから入ったりとかが多いと思うんですけど、今の作風に至ったのはなぜだったんですか?

V さっき言った内なる宇宙を自覚してく中でもっと深いアブストラクトな描きたくなってきて。 だんだんとペイントしていくテンションとかメンタリティがはっきりしてきたんですよ。
あとスケーターが描く絵とか、グラフィティとか、ストリートアートとかっていうのを一歩引いてというか、自分の視点からとらえることができるようになってきて。 はっきりいってストリートアートつってもそんなもの無いじゃないですかここには。 俺が生まれ育った地元にはそんなもの無いし、ストリートなんて無い。 「通り」ですよ。路地。スケートやヒップホップっていうのはその街の話だから。グラフィティはアメリカのゲットーで必然的に誕生した訳ですよね。生まれるべくして生まれたわけだから。 だったら自分の町で起こるべくして起こることをやったら面白いじゃないですか。
部屋で描く作品は作品で追求してて。 薄黒さんが、ストリートアートっていうカテゴライズってある意味で自分達を守ってくれるものでもある、みたいなこと言ってて。 この意味、凄いわかる。 これはそういう絵だからっていうのを取り払ってもただ面白い絵を描きたいですね。 作品をキャンバスに描くっていうのはそういうことですよ。 だからライターの友達で外にしか描かないって言うのもわかる。
俺もわかる人にはわかるというか、マニアックというか、そういうある意味偏屈な空間の住人だけど、やってることはどこでも通用するっていうスタンスでいたいし。 個展に来てくれたおばさんがいて、おばさんはストリートとかそんなの全然知らないし俺の活動も知らないけど、ハマって見ていってくれたんですよ。 そのおばさんが、こういう絵は勝手に楽しめばいいんでしょ、って言ってきて。 その通りです、って言って。 まったくその通り。 この前ある人が言ってたのが、展示した作品がある、それを観覧する人がいる。その関係には作者すら介入することができないと。感覚でなんとなくわかっていたことだけど妙に感心してしまいましたね。

□ 結構昔の作品見るとまだまだだったなーこの頃みたいに思う事ってないですか? 自分等デザインで結構あるんですけど。

V うん。わかる。でも技術は上達するけど感覚的な部分は違うじゃないですか。 その頃の方が感覚的に冴えてたみたいな事もあると思いますよ。だから今回の展示してるのは古くて3年前の作品ですけど、これはこの時の感覚だったから描けたっていうのもありますからね。

□ 描き始める時ってこうしようっていう青写真みたいなのってあるんですか?

V んーすごく漠然としたものですね。 絵によります。 でも描くと覆されるんですよ。 あとは流れにまかせて描く。 感覚で。

□ あと気になってたのが、色を使わないじゃないですか? なんで使わないんですか?

V 白黒が好きとしか言い様がない。 こだわりでもあるし、でも、色使う時がくるのかとか考えたりもします。 あとクローム(銀)も使うんで完全なブラックアンドホワイトではないです。 クロームは色を反射するので夕日があたると赤くなるし。 置かれる場所で変わるんですよ。

□ べんさん日本意識してないっていうけど。 日本をバリバリ感じるんですけど(笑)

V 日本は意識してますよ。 ただ描く時は特に日本の何をとかっていうのを意識したりはしてないんですよ。 そこはインクオンシークレッツの部分ですね。

□ 日本というか、会津ってより濃い日本じゃないですか。 そこがあるんじゃないかって思うんですよね。 でもアメリカを意識した事もありますよね?

V うん。もちろん。 意識したなんてもんじゃないですよ。始めた頃って全然情報なくて、俺も当時のFine見てた世代だから。 その頃って国内のアンダーグラウンドの情報を得るのって至難の技だったし、アメリカのことのほうがまだ見れたじゃないすか。 スケートビデオ見てれば間違いなかったし。

□ 見てるものはアメリカなんですよね。 でも出てくるものが全く正反対っていうか。

V 一巡したんですね。 帰ってきたというか。そこが会津の部分なんだと思う。 自分の根を描き始めたらやっぱそうなってきたって感じっすね。 滲み出てくる部分っていうのは「見たもの」より、そうやって「育ってきた」っていう事なんじゃないですか。


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